シャーマンと依り代

フランスのドルドーニュ地方モンティニャック村の近くで発見されたラスコーの洞窟壁画には、1.7万-2万年前に描かれた大きな動物の絵画が多く、ほとんどは、化石の調査から、当時その地域に実在した動物とされる。なかには獣人の絵画も含まれ、トランス状態のシャーマンを描いている可能性を指摘する研究者もいる。

ミノタウロス（Minotaur）は、ギリシア神話に登場する牛頭人身の怪物。クレタ島で生まれた古代クレタ文明を象徴する存在。写真の像は、紀元前460年ごろに制作された作品を、ローマで作りなおされたコピーとされる。アテネ考古学博物館所蔵。

ホルス（Horus）は、エジプト神話における天空の神。ハヤブサ（もしくは鷹）の頭を持ち、太陽と月の両目を持つ成人男性として描かれる。古代エジプト神の中で最も古く、最も多様化した神の一つといわれ、王権の象徴とされる。

アヌビス（Anubis）は、エジプト神話に登場する冥界の神で、古くから崇拝されていたミイラづくりの神。イヌ科の動物の頭部を持つ半獣の姿で描かれた。その身体は、ミイラ製造時に防腐処理のために遺体にタールを塗りこみ黒くなるのに関連して黒で描かれる。 画像は、紀元前1275年頃に書かれた「死者の書」のなかの「死者の裁判」の章。天秤の右側で、アヌビスが、法の象徴である羽と、故人の良心（心臓）を比較検討している。

ヒンドゥー教の象の神「ガネーシャ（Ganesh）」。サンスクリット語で「群衆（ガナ）の主（イーシャ）」を意味する。豊満な体格の人間に、片方の牙の折れた象の頭をもった神で、4本の腕をもつ。インドでは利益をもたらす神とされ、「富の神様」として商人などから絶大な信仰を集める。

患者を癒すシャーマンを描いたモチェのセラミック。モチェ（Moche）は、ペルー北部の沿岸にそそぐ「モチェ川」から呼称される高度な古代文明の名称。紀元前後から西暦700年ごろまで繁栄し、インカ（Inca）に先行する「プレ・インカ」と呼ばれる。

1805年に、富山湾で捕獲されたと伝えられている「人魚」の絵。添付テキストには、生き物の長さが10.6メートルだと記録されている。日本では、人魚の肉を食べると、不死が得られると信じられた。著名な博物学者の毛利梅園（もうりばいえん：1798-1851）は、動植物のカラフルな描写で知られるイラストレーターで、1835年の著書「梅園行風」に人魚のスケッチを掲載した。

アテネのケラメイコス（Kerameikos）の古代墓地で見つかったセイレーン（Siren）像。上半身が人間の女性で、下半身は鳥の姿。中世以降は人魚のような半人半魚の怪物として記述される。魅惑的な歌声で航行中の船員を惑わし、船舶を遭難させる。

英国の社会人類学者、ジェームズ・フレイザー（Sir James George Frazer：1854年-1941年）は、シャーマンを、霊媒（medium）、予言者（prophet）、見者（seer）、呪師(sorcerer)と分類。

シャーマンが儀式で使用する魔法のパワーフィギュア。材質は、木、鉄、繊維。20世紀初頭、コンゴ民主共和国。

タイ北部のランパーン（Lampang）で、スピリチュアルハウスを祭るシャーマンの儀式。同地域では、ほとんどの家に、ミニチュアの家や寺院が柱や台座に取り付けられている「スピリチュアルハウス」がある。縁起の良い屋内に配置し、問題を引き起こす可能性のある霊の避難所を提供することを目的とする。古代ローマのラレスファミリア（Lares Familiares）と同様に、屋外の神殿に加えて、屋内にも配置される。東南アジアの先住民族で、紀元前より独自の文化を持っていたモーン族の風習が起源とされる。

マリアッチ（mariachi）でシャーマンが儀式を行う。スペイン人と出逢う前のマリアッチは、ちょうどカトリック教会の祭儀「ミサ（mass）」のような宗教的な祝賀行事の一環として、ガラガラ、ドラム、フルート、巻き貝などでメキシコ古来の音楽が演奏された。植民地時代に、スペイン人は、バイオリン、ギター、ハープ、金管楽器、木管楽器を導入し、先住民とメスティーソ（Mestizo）たちは、これらの楽器を演奏して作ることを学び、従来の楽器に取って代わった。さらにスペイン人は、音楽グループの概念を導入し、メキシコで多くの民俗音楽スタイルを生み出した。2011年、ユネスコはマリアッチを無形文化遺産に認定した。

タイ北部に住むヤオ族（Yao）のシャーマンが使用するマスクと専用器具。ヤオ族は、中国湖南省から雲南省、東南アジア北部の山岳地帯に広く住む少数民族で、中国政府が公認した55の少数民族、またベトナム政府が公認した54の民族グループの１つ。前回の国勢調査によれば、中国に260万人以上、ベトナムに約50万人、タイに4万人、ラオスに2万人が暮らす。

秋の午後、森の中で太鼓と煙で伝統的な儀式を行うモンゴルのシャーマン。モンゴルのウランバートル。

病気を治療するために、ドラムを演奏しながら儀式を行うロシアのシャーマン。

米アラスカ、カナダ一帯の先住民族「トリンギット（Tlingit）」族が、悪霊・悪魔払いに用いるマスク。18世紀ごろ、西洋人によってもたらされた天然痘などの感染症が、免疫を持たないトリンギットをはじめとする一帯の先住民族たちの間で著しく流行した。

白い羽織と赤い袴をまとう日本の巫女（Priestess）。古来、自らの身体に神を宿す「神降し（かみおろし）」や「神懸り（かみがかり）」の儀式を「巫（かんなぎ）」と呼び、つかさどる女性が巫女とされる。現在でも、巫女は男女雇用機会均等法の適用外で、女性を指定しての募集が認められている。

「千と千尋の神隠し」の舞台モデルとの説もある台湾北部「九ふん（Jiufen）」のレトロな街並み。階段状の路地に赤い提灯が並ぶ。人気の観光スポットとなっている。

地蔵（じぞう）は、仏教の信仰対象である菩薩の一尊（複数あるうちの一つ）。サンスクリット語では「クシティガルバ」。クシティは「大地」、ガルバは「胎内・子宮」の意味で、意訳して「地蔵」と呼ぶ。日本における民間信仰では、道祖神としての性格を持つとともに、「子供の守り神」として信じられており、よく子供が喜ぶ菓子が供えられている。

英国の人類学者エドワード・タイラー（Edward Tylor：1832-1917）は、「文化人類学の父」と呼ばれ、アニミズムを提唱。タイラーの著書「未開文化（Primitive Culture）」では、アニミズムの語源は、17世紀の化学者ゲオルグ・シュタールの生気論に由来するという。

安養山西蓮寺（佐世保市）「幸せを迎える六蛙」