SPECIAL FEATURE

AI時代に哲学と歴史が教える人間力の真髄
‐未来への知恵‐

AI(人工知能)の発展と普及により、Siri、Google アシスタント、Alexaなどのスマートフォンの音声アシスタント、自動車の自動運転やアシスタント機能、電話自動応答システムは既に身近な存在となっている。最近では、生成AIや対話型AIのChatGPTが確実に注目を集めている。これらの技術は飛躍的な発展を遂げ、日常生活やビジネスで幅広く活用されており、私たちの暮らしをより便利で豊かに変えている。しかし、その使用に伴う法的・倫理的な問題や経済的・社会的影響を考慮しなければならない。これらの側面について、今のAI時代に必要な人間的資質(チャレンジ精神や主体性など)、発想力・創造性、対人関係能力、課題解決能力を歴史的背景を通して哲学的な視点から振り返る。

Category : 歴史

Date : 2024.06.26

参考文献

現代の倫理 改訂版 倫理309(山川出版社刊)
西洋哲学の根源(納富 信留著/放送大学教育振興会)

 

※外務省や駐日大使館が公式に表記する「ギリシャ共和国」の国名は、教科書や学術文献では

「ギリシア」と表記されることが多く、本特集では教科書や学術文献を踏襲し、ギリシア表記にしました

形而上学(Ontology)存在の本質や宇宙の本質についての探求ー実在の本質や存在の根源、時間や空間の性質などが含まれる

哲学の意味とは、根本的な問いを探求し、人間や世界、知識、存在についての理解を深めること。哲学の目的は、単に答えを見つけることではなく、問いを立てることで新たな視点や理解を得ること。哲学は日常生活の中で出会うさまざまな問題や疑問に対して、新たな視点や解決策を提供し、それによって、個々人がより豊かで意味のある人生を送るための道筋を示してくれる。現代の哲学は西洋哲学の基盤の上で論じられる。西洋哲学は、古代ギリシアに始まり、ローマ帝国やキリスト教中世を経て、主にヨーロッパや地中海沿岸地域を中心に発展。三大哲学者といえば、ソクラテス、プラトン、アリストテレス。ソクラテスとプラトンは師弟関係にあり、後にプラトンはアカデメイアという学園を設立し、理想的な政治のあり方や哲学を教えた。アリストテレスはそのアカデメイアで20年学び、プラトンと師弟関係にあった。約2000年後、盛期ルネサンスのイタリア画家、ラファエロ・サンティは彼らを描いた有名な作品「アテナイの学堂」を制作。この作品の中央には、プラトンとアリストテレスが描かれている。描かれている人物の顔は、盛期ルネサンス時代の偉大な芸術家をモデルにしていると言われている。今も議論が続いており、さまざまな見解が存在するが、例えば、中央白ひげを生やしたピンクのマントの男性はプラトンであり、レオナルド・ダ・ヴィンチをモデルにして描いたと言われている。その男性の足元に四角い机を出して考え事をしている男性は、哲学者ヘラクレイトスであり、モデルはミケランジェロとされている。また作者であるラファエロ自身の自画像もこっそりと描かれており、フレスコ画向の右下に、黒い服と黒い帽子を身に着けてこちらを覗いているのが彼といわれている。

認識論(Epistemology)知識の本質やその獲得についての考察ー知識の起源、信念の正当性、真理の定義などが含まれる

17世紀から現代に至るまでの近現代哲学の概念や思考には、その基礎にギリシア哲学があり、「始まり」にさかのぼって再検討することが必要である。ギリシア哲学以外にも中世哲学やルネサンス哲学など、多くの歴史的な哲学の流れが近現代哲学に影響を与えているが、多くの近現代哲学者は、ギリシア哲学の問題意識や概念を受け継ぎ、それを発展させたり、批判的に再検討したり、今日の生き方や世界に対して大きな意義をもつとされている。19世紀のドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェは伝統的な認識論や真理の概念に対して批判的な立場をとる。彼は絶対的な真理や知識の可能性に疑問を投げかけ、『ツァラトゥストラはこう語った』(Thus Spoke Zarathustra)や他の著書でもその考えを示した。ニーチェは伝統的な道徳や宗教的な価値観に強い批判を加え、「神の死」「永劫回帰」「力への意志」などの概念を提唱。これらの思想は当時の哲学や文化に革命をもたらし、精神医学や心理学の発展にも影響を与えた。特にフロイトの精神分析学やユングの分析心理学において、ニーチェのアイデアは重要な参照点となった。ユングは自身の著作や講演の中で、ニーチェの哲学的な影響について言及している。またドイツの作曲家・指揮者のリヒャルト・ワーグナーとの関係性は、初期の熱狂的な友情関係から、後の激しい対立へと劇的に変化するも、両者の思想と創作に深い影響を与えた。ニーチェの哲学とワーグナーの音楽には、それぞれ互いの影響が見られる。

倫理学(Ethics)善悪や正しい行為についての考察ー道徳的価値観、行動の基準、人々の行為の正当化などが含まれる

生成AIや対話型AIのChatGPTは、飛躍的な発展を遂げており、カスタマーサポート、自動文章生成、パーソナライズされた教育コンテンツなど、日常生活やビジネスで幅広く活用されている。画像や音声、テキストなどさまざまなコンテンツを手軽に生成できる生成AIは、業務効率化や新たなアイデアの創造など、多くのメリットが期待できる。ただし、新しい技術が生まれたときには、それらができないことや、実用によって発生するリスクやデメリットについても慎重に考える必要がある。これには、哲学的な視点が求められる。例えば、学校でAIが生徒の学習状況を分析し、個別の学習計画を提案する場合、以下のような倫理的問題が考えられる。1.個別指導の公平性:AIが推奨する学習計画がすべての生徒に対して公平であるかどうか。2.生徒の潜在能力:AIが見逃している生徒の潜在能力をどのように評価するか。3.データのプライバシー:生徒の学習データがどのように収集、保存、利用されるか。これらの問題に対する解決策は、技術的なアプローチだけでなく、倫理的、法的、社会的観点からも慎重に検討する必要がある。AI倫理に関連する思想家としては、イマヌエル・カント(『純粋理性批判』)、ジョン・スチュアート・ミル(『功利主義』)、ジョン・ロールズ(『正義論』)、ユルゲン・ハーバーマス(『コミュニケーション行為の理論』)などが挙げられ、彼らはそれぞれ道徳的な行動の原理や正義の概念についての理論を発展させ、現代の倫理問題に対する洞察を提供している。

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