Echapper a la critique - 批評からの脱出 - Borrell del Caso, Pere (1835-1910) - キャンバスに油彩 - 1874 だまし絵 - Banco de Espana

SPECIAL FEATURE

絵画芸術トレンド気象台
‐ 辞書にない新しい技法と画法 ‐

油彩(オイルペインティング)、透明水彩(アクアレル)、不透明水彩(ガッシュ)、テンペラ(卵黄やにかわ)、フレスコ画(壁画の一種)、パステル画など、画法はアーティストがどのようなスタイルで表現するかを決定し、写実主義(リアリズム)、印象主義(インプレッショニズム)、抽象画法、表現主義(エクスプレッショニズム)、超現実主義(シュルレアリスム)など、技法はその表現を実現するための具体的な手段を提供する。
一方で創造をカテゴリー分けすることは、固定観念の形成や創造性に制約を加え、偏見やステレオタイプを強化し、個別の違いや細かいニュアンスを見落す可能性があるが、カテゴライズすることで、情報や知識を体系的に整理でき、類似の問題に対する既存の解決策を適用しやすくなり、他者と効率的に情報を交換できるメリットがある。
カテゴリー分けは、時代とともに崩れる。絵画芸術のトレンドは、文化や社会の変化、新しい技術やメディアの登場、経済状況やアート市場の動向、美術評論や教育、そしてグローバル化による異文化交流など、多様な要因によって形成される。各時代の社会的価値観や技術革新が、絵画のスタイルやテーマに影響を及ぼす。

※世界中のギャラリーや美術館と提携し、高品質な美術画像を提供する英国の著名なフォトエージェンシー「Bridgeman Images」。ユニフォトプレスは、Bridgeman Imagesの画像と動画を取り扱っています。書籍や教科書での利用に加え、テレビや商品化など、幅広い用途での利用に対応し、著作権処理の代行サービスも行っています。お気軽にお問い合わせください。

Category : 絵画

Date : 2024.06.12

参考文献

Art Industry Trends 2024(Artsy)
Hyperallergic
THE ART NEWSPAPER
Sotheby’s Auction Results
幻想芸術の世界 シュールレアリスムを中心に(坂崎 乙郎著/講談社刊)
抽象絵画への招待(大岡 信著/岩波書店刊)

アブストラクト エクスプレッショニズム(Abstract Expressionism)

「Abstract Expressionism(抽象表現主義)」は、1940年代から1950年代にかけてアメリカで発展した芸術運動で、表現の自由や感情の爆発、個人的なアイデンティティの探求を強調した。大胆な筆使いや色使いに加え、具象的な形態を排除し、即興的な制作や大規模なキャンバスを特徴とし、ドリッピングやアクションペインティングなど多様な技法を用いる。代表的なアーティストには、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、ウィレム・デ・クーニング、バーネット・ニューマンが知られる。「Abstract Expressionism(抽象表現主義)」運動は、アメリカを現代美術の中心地とし、世界の美術潮流に大きな影響を与える。

ニュー フィギュラティブ アート(New Figurative Art)

「New Figurative Art(新具象絵画)」は、20世紀後半から21世紀初頭に再興した芸術運動で、抽象表現主義への反動として生まれた。写実的な表現と抽象的要素を融合し、アーティストの個人的経験や集団的記憶・歴史、現代の社会問題や個人のアイデンティティなどを描く。再び具象表現に焦点を当てる動きが活発で、現代美術における重要な潮流。
「Figurative Art(具象絵画)」は、人間、動物、風景などの具体的な対象を描くことを特徴とするが、「New Figurative Art(新具象絵画)」は、「Figurative Art(具象絵画)」を現代的なコンテクストで再解釈し、従来の具象絵画とは異なる表現方法やテーマを取り入れる。
代表的なアーティストには、写実的な肖像画やヌードを描き、肉体の質感と精神的な深みを強調するルシアン・フロイド。歪んだ人物像や暴力的なイメージで人間の存在や苦悩を表現するフランシス・ベーコン。多様な技法と現代技術も取り入れて、風景やポートレートを描くデイヴィッド・ホックニー。女性の身体を大きく描き、体のリアリズムと美学を再考するジェニー・サヴィルがいる。

ミックスドメディア(Mixed Media)

「Mixed Media(ミックスド・メディア)」は、複数の異なる材料や技法を組み合わせて制作された芸術作品。絵画にコラージュやオブジェクトを組み合わせるなど、複数のメディアを融合させる手法が人気で、視覚的に豊かで多層的な表現を可能にする。特徴に、多様な材料の使用、技法の融合、テクスチャーと質感の強調、コンセプチュアルなアプローチが挙げられ、アートの定義や枠組みを広げ、観客に多層的な意味や新しい視点を提供する。
代表的なアーティストには、日常的なオブジェクトを用いたロバート・ラウシェンバーグ、旗や地図を取り入れたジャスパー・ジョーンズ、大規模な切り絵のインスタレーションで知られるカラ・ウォーカー、自然素材を用いるアンディ・ゴールズワージーがいる。

ハイパー リアリズム(Hyperrealism)

「Hyperrealism(ハイパーリアリズム)」は、1970年代にアメリカではじまった、写真のように極めてリアルな絵画や彫刻を制作する芸術運動。フォトリアリズムから発展し、精密な描写と感情的な深みを兼ね備えた作品が特徴。細部まで緻密に描かれるため、一見すると絵画であることが分からないほどのリアリズムを持つ。代表的なアーティストには、チャック・クローズやリチャード・エステスがいる。「Hyperrealism(ハイパーリアリズム)」運動は、技術的な能力を示すと同時に、観客に強烈な視覚体験を提供し、現実の複雑さや美しさを再認識させる役割を果たす。
多くの有名な絵画でオイルペインティング(油彩)画法が採用される。油絵具は、空気中の酸素や光による劣化を防ぎ、乾燥後も色が退色しにくいので、長期間にわたり鮮やかで高い色彩を保つ。また油絵具は乾燥が遅いため、色の混ぜ合わせや修正が容易で、描いている間に修正や変更が行える。
15世紀にオランダの画家ヤン・ファン・エイクが油絵画法を改良し、ルネサンス期の多くの巨匠たちが油絵画法を採用し、ヨーロッパ中に広まり、「インパスト(Impasto:厚塗り)」や「グレーズ(Glazing:薄塗り)」、不透明な層を重ねる「スカンブリング(Scumbling)」、絵具が乾かないうちに次の色を重ねる「アラ・プリマ(Alla Prima)」、「グリザイユ(Grisaille)」、「ルベ・スミス(Rubbing and Smudging)」、「パレットナイフ(Palette Knife)」、「ドライブラシ(Dry Brush)」画法など、多様な油彩表現方法が確立した。

テクノロジーと多様性が生む新たな美術トレンド

一般に美術(Fine Art)のトレンドを追うと、アートとテクノロジーの融合を核に、デジタルツールを使い、観客が作品に触れたり、参加できるインタラクティブアートや、AI(人工知能)、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)などの新技術を活用したデジタルアート作品が増えている。また環境問題や多様性への関心が高まる中、環境アートやサステナビリティをテーマにした作品、インクルージョンとダイバーシティ、ジェンダー、民族、文化など多様な背景を持つアーティストの活躍が注目される。
デジタル化が進む一方で、手作業によるクラフトやハンドメイドのアートが再評価され、伝統的な技法や素材を使った作品が、温かみと独自性を持つものとして人気を集める。さらに、異なる分野の知識や技術を融合させたクロスディシプリナリーアートは急増し、科学とアート、音楽とビジュアルなどの、異なる分野が交差することで新しい表現が生まれ、新しい鑑賞体験を提供する。アーティストは新しい技術やテーマを取り入れながら、自分の作品を通じて現代社会に対する洞察を提供し続ける。

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