SPECIAL FEATURE
洋服が日常の服装として定着している現代の日本。今では和服はまれにしか着用されないが、明治の文明開化までは誰もが和服を身に着けており、流行も時代によって異なっていた。鎖国下の日本で育まれた独自の素材や技術は、現代の服飾にも多く活かされている。こうしたかつての日本の着物と、それがもたらした世界の文化や歴史を通じて、着物が持つ普遍的な美しさを紹介します。
Category : 歴史
Date : 2025.03.26
和の文化をうけつぐ 日本の伝統もよう〈1〉(小山弓弦葉/汐文社)
和の文化をうけつぐ 日本の伝統もよう〈3〉(小山弓弦葉/汐文社)
JAPAN ロバート・ブルーム画集(監修=岡部昌幸/芸術新聞社)
ロバート・ブルーム画集(監修=能澤慧子/ナツメ社)
着物の始まりは、奈良時代から平安時代にかけて、現代の着物につながる基本的な形が確立された。当時は貴族や公家の間で、装いの重要な要素として発展した。その後、江戸時代になると、着物のデザインや柄・もよう、素材などが多様化し、庶民の間でも広まった。江戸時代の人々は、涼しく過ごすために着物にもさまざまな工夫を凝らした。そのひとつが「水をかけて涼む着物」である。麻素材の小千谷縮(おぢやちぢみ)や越後上布(えちごじょうふ)は、水に濡れると肌に張り付かず、気化熱でひんやりする特徴があった。外出前に着物に水をかけて、涼しくしてから出かけるというユニークな方法が生まれた。また、江戸の町人たちは物を大切にする精神が強く、着物も「リサイクル」するのが当たり前だった。例えば、着なくなった着物は布団や座布団に仕立て直し、さらに古くなったら雑巾や手拭いにし、最後には「灰」にして畑の肥料にした。特に「古着屋」は大繁盛し、吉原の遊女が着ていた豪華な着物が町人に売られることもあった。現代の「古着文化」は、実は江戸時代から続いているのかもしれない。
日本が鎖国政策を取っていた江戸時代、唯一の西洋との貿易相手はオランダだった。オランダ東インド会社(VOC)を通じて、ヨーロッパに輸出された着物は、ガウンやローブとして使用された。特にオランダをはじめとする西欧諸国では、着物が男性用の室内ガウンとして愛用された。着物は「エキゾチックなオリエンタルな衣装」として人気を博し、前を紐で留めるスタイルはガウンやローブにぴったりだった。男性が室内でリラックスした時間を過ごす際に着用され、豪華な絹や刺繍が施された着物は、裕福な人々にとってステータスシンボルとなり、上流階級の人々に愛された。フェルメールの『地理学者』(1668年)には、日本の着物のようなローブを羽織った姿が描かれている。
日本が鎖国を緩め始めた19世紀半ばから、浮世絵や出版物、漆器などの工芸品がヨーロッパに伝わり始めた。ロンドンやパリ、ウィーンの万国博覧会には日本から美術品が出品され、ヨーロッパで日本美術が注目を集め、19世紀後半に日本ブームが巻き起こった。これを「ジャポニスム」と呼ぶ。着物もその一つであり、ヨーロッパの絵画や工芸など、芸術を中心に広い分野に影響を与え、20世紀初めごろまで続いた。
江戸時代、武士は贅沢を禁じられていたため、派手な着物を着ることができなかった。そこで考案されたのが「江戸小紋」である。遠目には無地に見えるが、近くで見ると細かい模様が入っているという"粋"な工夫が施された。大名ごとに「定め小紋」という独自の柄があり、例えば「鮫小紋」は紀州徳川家が使用していた。幕府の厳しい規制を逆手に取った、粋で洗練されたデザインが生まれた。ほかにも、表から見ると地味な着物なのに、脱いだり動いたりすると裏地に豪華な刺繍や派手な柄が見えるという「裏勝り(うらまさり)」の文化も存在した。特に裕福な商人たちは幕府に遠慮しながらも「粋」を競い合い、裏地に龍や鶴などの豪華なデザインを施すことが流行した。まるで「見えないところでおしゃれを楽しむ」江戸のファッション革命であった。
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