SPECIAL FEATURE
攻撃と防御は常に表裏一体。攻防の象徴ともいえるのが、ホコ(矛)とタテ(盾)。ホコは、もともと狩猟用具として発展し、長いリーチと高い貫通力を持つ攻撃武器として戦場で用いられた。一方、タテは敵の攻撃を防ぎ、戦士を守る防具として生まれ、攻撃と防御のバランスの中で進化した。初期のホコは木製の柄に石器を取り付けたものだったが、青銅器や鉄器の時代には金属製の穂先が導入され、威力が増した。タテも同様に、木製や皮張りのものから金属製や複合素材へと発展し、防御力が強化された。
中世に入ると、騎士は「長槍(ランス)」で突撃し、タテは、小型で機動性の高いバックラー、大型で全身を守るカイトシールドなど、戦況に適したデザインが採用され、さらに、タテには紋章が描かれ、個人や部隊の象徴としての役割も担うようになった。「突き通せない盾(タテ)と、何でも突き通す矛(ホコ)とは両立しない」、つじつまが合わないことを表す故事成語「矛盾」は、「漁夫の利」などとともに、日本では小学3年生から4年生の国語教育で学習する例が多い。
欧米の考古学では「石器(stone tools)」の英訳に「武器(stone weapons)」と表記されることが多い。石器=道具(tools)としての側面に加え、狩猟や戦いのために使われた石器が多いことから、石器=武器(weapons)として捉えられる。
投げ槍(stone-tipped spear)や石鏃(stone arrowheads)は、獲物や敵を攻撃するために使われ、石斧(stone axe)は、木を切るだけでなく戦闘時の武器にもなった。石の棍棒(stone club)は、打撃用の武器として使用された。欧米では、武器は人類の歴史とともにあるが、日本の岩宿時代(旧石器時代)には武器の考古学的証拠は見つかっておらず、弥生時代にはじめて武器が出現したとの説が有力。
古代ギリシャの重装歩兵を描いた壺や、トロイア戦争のワンシーンを刻む美術品。さらには、戦場での威信を示す金のヘルメットや、武士の魂とも言える槍の数々。紀元前の青銅器時代から近代に至るまで、ホコとタテは時代の変遷を映し出す象徴だった。
プロイセン国王に贈られたクルップ社の大砲、ドイツ軍のフィアリングス高射砲、英国が暗号解読のために開発した「コロッサス」など、17世紀から現代に至るまでの防衛技術は時代とともに変化した。一方で、レンブラントの「夜警」に見られる17世紀の武装市民、伝統的な甲冑を纏うジョージア・ヘヴスル族の戦士、そして1920年代の防弾チョッキの実験風景に至るまで、防御の工夫もまた進化を続ける。
産業革命期に入るとホコとタテは大量生産が可能になり、また技術革新が戦力強化に大きく影響を与えることから、米国国防総省は1940年代(第二次世界大戦中)に「MIL規格の原型」を策定し、軍事機密として厳しく管理し、1950年代に、より体系化されたミル・スタンダードが制定された。1980年代には、米国政府が一部のMIL規格を公開し、軍事技術が民間転用されるようになった。1990年代に公開されたインターネットをはじめ、スマートフォンやAI用半導体、ABS(アンチロックブレーキ)なども軍事技術が民間転用された例。
映画スター・ウォーズシリーズに登場する「ディフレクターシールド」やデス・スターの「スーパーレーザー」、新世紀エヴァンゲリオンに登場する「絶対領域(Absolute Terror Field)」と呼ばれる防御障壁の「ATフィールド」、宇宙戦艦ヤマトが装備する「波動砲」、機動戦士ガンダムシリーズに登場するモビルスーツの装甲技術「イオンクラッド」と巨大レーザー兵器「コロニーレーザー」。サイエンスフィクション作品には、さまざまなタテとホコが描かれる。
人工知能を搭載したミサイル、戦場を飛び交う自律型無人機、サイバー空間での攻防、対ドローン兵器から軍用ロボット犬。ボーイング社が2015年に特許出願した「プラズマの壁」で物理攻撃を防ぐ技術、英国BAEシステムズが開発した「電磁プラズマフィールド」、電磁力で高速弾を発射する「レールガン・レーザー砲」など、サイエンスフィクションを彷彿とさせるタテとホコが、現実の科学技術の発展とともに実現しつつある。
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