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魔法の歴史

4世紀のパピルスには、呪術に使用する指輪が記載されている。これはギリシャの魔法ハンドブックの一部で、指輪を地面に埋めている間は、黒魔術は封印される。指輪に願いを刻印して地面に埋めると、所有者の刻印した内容の願いが叶う。J.R.R.トールキンによる長編小説「指輪物語（The Lord of the Rings）」の初版は、1954年から1955年にかけて出版された。

1907年、探検家のオーレル・スタインは、中国敦煌の洞窟で 4 万点もの仏教の写本と絵画の宝庫を見つけた。その中には、世界最古の天体表である巻物があった。 望遠鏡が発明される数百年前の西暦700年頃に作られたもので、北半球から肉眼で見える1,300個以上の星が示されている。当時、天体の動きは中国の皇帝と朝廷の行動を直接反映していると考えられていた。

クレンケ・アトラス（Klencke Atlas）は、ジョアン・クレンケが、1660年に英国王のチャールズ2世に贈呈したのにちなんだ名称。世界最大規模の地図で、高さは1.75メートル（5フィート9インチ）、幅は1.9メートル（6フィート3インチ）あり、大英図書館では運ぶのに6人が必要だったという。地図愛好家だったチャールズ2世は、クレンケ・アトラスを高く評価し、クレンケには騎士の称号が与えられた。

「ハリー・ポッター」シリーズ第1巻のタイトルにもなっている「賢者の石」は、どんな金属も金に変えるというもので、中世ヨーロッパの錬金術師がその獲得に奮闘した。錬金術が記載された書籍・スプレンダーソリス（太陽の輝き）は、1582年にドイツで作られた錬金術に関して書かれたものでもっとも美麗と言われる。

神話にも登場する「不死鳥」。ダンブルドアが飼っていたフォークスは、一番人気のある不死鳥かもしれない。中世の動物寓話集（実在および架空の動物に関する百科事典）には、不死鳥の習性や復活について多くの記述が見られる。一説によると不死鳥は、500年ほど生きるアラビア原産の鳥で、年老いると自身を枝や葉を集めて火を起こし、自らの羽根で扇いで炎を大きくして自らの身体を焼き尽くし、9日後に灰の中から蘇る。この伝説的な能力を「キリストの復活」になぞらえることも多い。

グリモワール（grimoire）は、フランス語で魔術書を意味し、魔法円やペンタクルやシジルのデザインが記された魔法書で、欧州中に流布。召喚儀式に登場する「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり（Eloim, Essaim, frugativi et appellavi）」という呪文は、日本でも有名。画像は、魔女のグリモワールからのページ。人間の頭蓋骨、コウモリの羽、ソロモンの指輪、惑星の標識、五芒星の絵。古北欧型ルーン文字とアングロサクソンルーン文字。悪魔や精霊などを呼び出して、願い事を叶えさせる。

大英図書館での記者会見に臨む作家J.K ローリング（Joanne Rowling）。「ハリー・ポッター」シリーズの作者として知られるローリングは、少年魔法使いのハリー・ポッターが、7つの作品を通して成長するに応じて、「少女が持つ魔法の魅力」を発見することに主題があることを明らかにした。

月岡芳年（1839-1892）が描いた茂林寺の文福茶釜。タヌキが僧に化けたという説に基づいて描かれた。茂林寺は、1426年、大林正通（大和尚）によって開山された曹洞宗の寺院。分福茶釜は、タヌキが化けた茶釜の昔話（民話）。

歌川広重の1859年の木版画「大地での狐火」。狐火（Kitsunebi）は人気のない山中で、火が見えたりする不思議な現象で、キツネの嫁入りのために灯されている松明とも言われ、良いことの起きる前兆とされた。現在でも天気雨（sunshower）を「キツネの嫁入り」と呼ぶ。世界の民間伝承でも、天気雨を「サルの誕生日（英国）」、「オオカミの結婚（フランス）」、「キツネの入浴（フィンランド）」、「悪魔の結婚（東欧）」、「キツネの結婚式（インド）」と呼ばれる。

歌川広重の1857年の木版画「王子装束榎大晦日の狐火」。稲荷神の使いであるキツネが榎の下に集まって火を灯す狐火伝承を描いた作品。農家では、キツネが灯す狐火の量で、新年の豊凶を占ったとされる。

日本最古の妖怪絵巻「百鬼夜行（Hyakki Yagyo）」。夜中に妖怪がパレードを繰り広げ、百鬼夜行に出遭うと死んでしまうといわれていたため、夜の外出を控えた。行列の先頭は妖怪「ぬらりひょん（Nurarihyon）」。しかし、「カタシハヤ、エカセニクリニ、タメルサケ、テエヒ、アシエヒ、ワレシコニケリ」と呪文を唱えると、百鬼夜行の害を避けられたとされる。呪文の内容は、「自分は酒に酔った者である」と意味を詠み込んだ歌。

漫画家、赤塚不二夫作「ひみつのアッコちゃん」は、現在の漫画では欠かせない魔女、魔法、変身という物語設定の草分け。主人公アッコは、変身する時、魔法の手鏡（make-up compact）に呪文を唱える。アニメ版では「テクマクマヤコン テクマクマヤコン」のあとに、変身したいものを唱える。漫画版では「鏡よ、鏡」と呼びかけ、変身したいものを逆読みする。元の姿に戻るときのアニメ版での呪文は「ラミパス ラミパス ルルルルル～」。

現在でも子どもが怪我したときに、なだめる時に「ちちんぷいぷい」という、まじない用語が使われる。由来は諸説あるが、一説によると、江戸時代、幼少の徳川家光が転んで泣いた時に、乳母の春日局（Kasuga no tsubone）が「知仁武勇は御代の御宝（ちじんぶゆうは ごよのおたから）」といって慰めたのが語源という。御代の御宝とは、将軍家の宝という意味。

アラビアンナイト（千夜一夜物語）の「アリババと40人の盗賊」では、「ひらけ！ゴマ（open sesame）」という呪文で、宝物が隠されている洞窟の扉が開く。1969年に米国で放送が開始された「セサミストリート」の名前は、「ひらけ！ゴマ」に由来するといい、日本ではNHKが放送し、その高視聴率に刺激を受けたフジテレビが、1971年に幼児教育番組を開発して放送した番組名が「ひらけ！ポンキッキ」だった。

大人気ゲームの「ファイナル・ファンタジー」と「ドラゴンクエスト」で繰り広げられる魔法の世界観は、ともに1981年に米国で発売されたコンピュータRPGの「ウルティマ（Ultima）」と「ウィザードリィ（Wizardly）」に由来すると言われ、ウルティマやウィザードリィの世界観は、1974年に米国で制作・販売されたテーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ（Dungeons & Dragons）」に由来するという。ウルティマには、魔術師(Sorcery)系と僧侶(Prayers)系それぞれに16種類ずつ、計32種類の魔法が用意されていた。

魔法使いがほうきに乗って飛ぶことは公然の秘密。魔女には必ずほうきが添えられ、ほうきと魔法は切っても切り離せない関係になっている。

ギリシア神話に登場する名医アスクレピオスの娘にあたる「ヒュギエイアのボウル（Bowl of Hygieia）」は、現在でも米国薬剤師会や欧州で多くの医薬団体のシンボルとして使われる。ヒュギエイアは、健康の維持や衛生を司る女神で、清潔や衛生を意味する英語のhygieneの語源。

ギリシア神話に登場する医神アスクレピオスは、優れた医術で死者すら蘇らせ、後に神の座についたとされることから、現在でも医学のシンボルとして利用されている。見たものを石に変える能力を持つメドゥーサの右側の血管から流れた蘇生作用のある血を使い、死者まで生き返らせた。

世界保健機関WHO（World Health Organization）の旗には、アスクレピオスの杖が描かれている。

左のウィルヘルム・カール・グリム（1786-1859）と、右のジェイコブ・ルートヴィヒ・カール・グリム（1786-1859）のグリム兄弟は、ドイツの言語学者と民俗学者。「グリム童話集」の編集者として知られる。ラプンツェル、ヘンゼルとグレーテル、シンデレラ、白雪姫など、人気のある物語がまとめられている。

「灰かぶり姫（シンデレラ：Cinderella）」。妖精のゴッドマザーが、カボチャを金色の馬車に変えて、舞踏会（ボール：ball）に参加できるようにする。画像は、ギュスターヴ・ドレによる19世紀の作品。

タロットの最初のカード「魔術師のカード」は、錬金術師を表し、四大元素からあらゆるものを生み出す力を持つ。

千夜一夜物語の「アーメッド王子と妖精パリバヌー」に登場する魔法の絨毯（magic carpet）は、空飛ぶ絨毯とも呼ばれ、登場人物を目的地に速やかに輸送する便利な道具として使われる。

「美女と野獣（La Belle et la Bete）」は、フランスの異類婚姻譚で、婚姻の相手としては、神、妖精、精霊など信仰対象となる存在の他、蛇、馬、キツネなど動物が相手となる話も多い。広く知られている物語では、魔法で姿を野獣に変えられたヒトが婚姻相手となっている。

ライマン・フランク・ボーム（Lyman Frank Baum：1856-1919）による小説「オズの魔法使い（The wonderful wizard of OZ）」が1900年に出版された初版の表紙。

ヒポクラテス（Hippocrates：紀元前460年ごろ-紀元前370年ごろ）は、古代ギリシアの医者。病気は呪術や神々の仕業ではないと考えた最初の人物とされ、医学を原始的な迷信や呪術から臨床と観察を重んじる経験科学へと発展させた。