SPECIAL FEATURE
2024年のパリオリンピックでは、都市スポーツ(urban sports)の導入が重視され、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンなどとともに、「ブレイキン」は都市スポーツに含まれる。より多様で若者にアピールする新しいスポーツの採用を進めているオリンピック委員会(IOC)は、ブレイキンが技術的な難易度や創造性を競う競技として評価。審査基準も明確に定められていることから、スポーツとしての側面が強調され、オリンピック種目としての採用が実現した。ブレイキン、スケートボード、パルクールなどの都市スポーツは、高価な道具や特定の施設を必要とせずに始められるため、幅広い層に参加の機会を提供する。
ダンスは、ディアスポラコミュニティでアイデンティティや文化的伝統を保持する手段。と同時に世代を超えて伝えられ、共同体の一体感や連帯感を強化する。一方、歴史を通じて、抑圧に対する抵抗の手段で、奴隷制度下や公民権運動の中、ダンスは自由や解放を求める象徴的な行為となり、抗議や連帯の表現として使用される。
古くは黒人霊歌といった宗教歌、労働歌といった後にブルースやジャズの元になったといわれるものがブラックカルチャーの起源と言われており、それらが世の中に与えた影響は計り知れないものがある。ニューヨークのストリートで発祥したヒップホップやスケートボードなどのカルチャーは「ストリート・カルチャー」と呼ばれ、そこから派生したストリート発祥のブレイキンが誕生した。ブレイキンはヒップホップ文化の象徴として広まり、創造性の要求されるダンススタイルは、競技としての魅力もあり、ダンススポーツとして技術や芸術的な要素が評価されるようになった。
Category : 歴史
Date : 2024.07.11
アフリカンダンスとディアスポラ(Diaspora)の関係は非常に深く、多くのダンススタイルや文化的表現がアフリカから世界中に広がった「黒人ディアスポラ」に由来する。アフリカの伝統的なダンスは、リズム、身体の動き、ストーリーテリングを通じて、宗教的儀式、社会的イベント、日常生活の一部として重要な役割を果たすが、多くは奴隷貿易によってアフリカからアメリカ大陸やカリブ海地域に移住した黒人コミュニティによって新しい土地に持ち込まれ、抑圧に対する抵抗の象徴としても機能した。
ジャマイカのレゲエとダンスホール、アフリカンリズム(バタドラム)とスペイン音楽が融合したキューバのルンバ、ダンスと武術が融合したブラジルのカポエイラ、ポルトガル音楽の影響を受けたブラジルのサンバは、カーニバルで広く踊られる。
アフリカ系アメリカ人のコミュニティから生まれたジャズダンスは、スウィングやブルースと密接に関連し、アフリカンリズムとアメリカの都市文化が融合したヒップホップ、ポッピング、ロッキングに加え、ブレイキンは、サルサ、カポエイラ、武道など、さまざまなダンスやバトル文化の影響を受ける。
アフリカンダンスと日本の舞踊は、一見すると異なる文化背景を持つが、いくつかの類似点がある。両者とも、差別や災害などの困難な状況においても、コミュニティの結束やアイデンティティの強化を保つために重要な役割を果たす。ともに儀式や祭りの重要な要素で、アフリカンダンスも日本の神楽舞(かぐらまい)も、宗教的・儀礼的な意味を持ち、神への奉納や祝福の表現として行われる。また音楽とダンスが一体となり、アフリカンダンスのドラムやパーカッション、日本の舞踊の太鼓、三味線、笛などの伝統的な楽器が欠かせない。
熊祭などの祭儀に行われるアイヌの生活の中から生まれた舞踊は、カムイ(神)への感謝や祖先への敬意を表し、大漁・大猟祈願、悪霊をはらう儀礼。バッタの踊り(バッタキ ウポポ)や鶴の舞(チカプ ウポポ)は、動物の動きを表す。
黒島口説 (くるしまくどぅち)は、八重山諸島の黒島の風景や人々の生活の様子を元気よく口説きながら踊る創作舞踊。八重山黒島の生活風土を誉め、五穀豊穣を予祝(よしょく)。八重山の豊かな風土や文化を伝える舞踊として親しまれ、地域社会の絆を深める。
異なる背景を持ちながらも、共通する要素が多いことは、ダンスが普遍的な文化表現であることを物語り、師弟関係を通じて技術や精神を伝え、歴史や文化を学ぶ手段として、次世代へと受け継がれる。
ブレイキンは、1970年代のニューヨーク市のサウスブロンクスで誕生し、ヒップホップ文化の一環として発展した。貧困と犯罪が蔓延する中で、若者たちはストリートで自己表現とカウンターカルチャーの一環としてブレイキンを始めた。男性ダンサーをB-BOY、女性ダンサーをB-GIRLと呼び、ダンスは、トップロック (Toprock)、ダウンロック (Downrock)、パワームーブ (Power Moves)、フリーズ (Freeze)の4つの要素で構成され、ダンサー同士が技を競い合う「バトル」が特徴で、即興性と独創性が求められる。
DJクール・ハーク(Kool Herc)は、楽曲のブレイク部分を繰り返し再生する「ブレイクビーツ」技術を発明。ターンテーブルを楽器として使用するスタイルを生み出し、スクラッチやミキシング技術の基礎を築いた。大音量のサウンドシステムを用いて、パーティーやストリートイベントを開催し、MC(マスター・オブ・セレモニー)とのコラボレーションにより、ラップ音楽の基礎を築き、ヒップホップ文化の発展に寄与した。
DJクール・ハークの技術とスタイルは、ヒップホップだけでなく、クラブミュージックやエレクトロニックミュージックにも影響を与え、世界中のDJが彼の手法を取り入れ、ダンサーに新たな表現の場を提供。「ブレイクビーツ」は、ブレイキンの誕生に大きな影響を与え、この「ブレイク」が、ブレイキンの名前の由来。
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