考古学者デビュー
‐文化の線引きを描き直す‐

2016年、エジプトのギザでクフ王の2番目のソーラーボートから、かつてファラオ・クフのオールを支えていたと思われる木製の梁を回収し調査する日本の考古学者、吉村作治教授（当時）。ソーラーボートは古代エジプトの遺物で最も有名な船の一つとみなされている

3D再構築のために骨格の特徴を記録する専用スキャナー。イタリアのボローニャにある考古学博物館に所蔵されている骸骨を調査。この作業は新技術を専門とするイタリアの組織であるENEAによって実施されている

考古学は何百年、何千年前の事を調べるだけではない。戦争犯罪現場の発掘もその一つ。2021年、ロシア・ロストフ地方でナチスの犠牲者の遺体を発掘し真実の解明にあたる

ハインリヒ・ヒムラー。親衛隊全国指導者で、ナチス・ドイツに存在した公的研究機関「アーネンエルベ」の設立者の1人。先史時代や神話時代の「北欧人種」が世界を支配していたことを証明するための様々な研究活動を行っていた

エルンスト・シェーファーは、ドイツの探検家、狩猟家、動物学者で、鳥類学を専門とした。1938-1939年のドイツ・チベット探検隊を組織し隊長として遠征に参加。この探検隊はナチス・ドイツ公的研究機関「アーネンエルベ」からの派遣であり、シェーファーはSS親衛隊少佐の資格をもって参加している。チベットでの学術探検はドイツ諜報部員としての役割を隠すためのものであった、とも言われている

1940年第二次世界大戦中、戦利品の説明を受けるアドルフ・ヒトラー。ヒトラーはオカルトや考古学にも非常に興味を持ち、世界各国に伝わる伝説上の遺物も集めていたとされる

アレクサンドリアの大灯台。紀元前3世紀頃にエジプトのアレクサンドリア湾岸のファロス島に建造された灯台。伝説によれば、戦時には鏡の反射光を敵の船めがけて照射して、船が海岸に到達する前に燃やすことができたという。しかしながら、灯台が存在した当時の光学技術、光反射技術の水準では、船を燃やすのはまず不可能である

地中海に面したエジプト第2の都市アレクサンドリアは、国際的な交易の中心地として栄え、およそ2000年前にはクレオパトラの宮殿があったと言われている。8世紀頃に地震などによって水没したとされるこの都市は、1992年以降海底遺跡として海洋考古学の学者が発掘を進めている。海洋考古学というのも注目されている

ヴェネツィア・サンマルコ大聖堂に収蔵されている「ノアの箱舟」のモザイク。ノアの箱舟は神話や伝説扱いとされているが、実際の出来事として考古学上でも研究されているようだ

クリスティーズオークションに出品された、1989年のパラマウント・ピクチャーズ/ルーカスフィルム制作「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」のために作られた小道具の聖杯。聖杯とは最後の晩餐でキリストが使った杯であり、はりつけに処せられたキリストの血を受けたとされている。この杯に水を注いで飲むと永遠の命が得られるといわれ、かのヒトラーも探していたようだ

中国・西安近郊でおこなわれていた兵馬俑の研究と修復。修復をおこなうことによって当時の状況が明らかとなり新発見につながることもある

ペンシルバニア大学博物館にある、陶器類の年代測定を行うアルファ線放射計数システム

イタリアのマグナグレシア国立博物館でリアーチェのブロンズ像を修復しているシーン。人の手での修復も重要な考古学の一部である

加速器質量分析の研究。加速器質量分析計 (AMS) で分析するためにサンプルを準備する研究者。この技術はイオンを高速に加速し、さまざまな放射性同位体の検出に使用される。応用例の1つは炭素14年代測定である。洞窟の壁から採取されたサンプルをパリのギフ・シュル・イヴェットにあるタンデトロンAMSで年代測定している

パリの研究所で加速器質量分析計 (AMS) で年代測定するための素材を準備する研究者。

ペトラはヨルダンにある遺跡。死海とアカバ湾の間にある峡谷にある。ぺトラとはギリシャ語で「崖」。1985年にユネスコの世界文化遺産に登録、2007年には新・世界七不思議に選出された。狭い峡谷の終わる先にあるのが、砂岩の断崖に刻まれたペトラの最も精緻な遺跡で宝物殿として知られるエル・カズネ。エル・カズネは1世紀初頭に偉大なナバテア人の王の墳墓として造られたものとされ、切り立った岩の壁を削って造られた正面は、幅30m、高さ43 mにおよぶ

シュリーマンが発掘した古代都市ティリンスの地図（1885年）。ティリンスは、ギリシャのペロポネソス半島にあるミケーネ文明の遺跡である。ヘラクレスにまつわる神話と結びついていて、いくつかの言い伝えでは、ティリンスがヘラクレスの誕生の地であるとされている

アガメムノンマスクとしても知られる葬儀用マスク。シュリーマン (1876年) によってミケーネの5号墓で発見された。金でできたこの仮面は死体の顔の上で発見され、シュリーマンは伝説上のギリシアの指導者アガメムノンの死体を発見したと信じ、この仮面の名前はここから来ている。しかしながら現代の考古学的調査は、この仮面が紀元前1550年から1500年のもので、これまで言われてきたアガメムノンの活動期より早いことを示唆している。現在はアテネの国立考古学博物館に展示されている

"マルタ島のハル・サフリエニ地下墳墓で見つかった「眠れる貴婦像」。世界遺産の街ヴァレッタ近くで1902年に新しい住宅地開発の際に偶然発見された。 墳墓は、紀元前3600年、まだ古代文明も生まれていない先史文明の遺跡といわれており、石灰岩をくりぬいて造られた地下神殿で地下三層の構造となっている。土器や人骨も一緒に発掘されており謎の解明が期待されている

2023年、ローマ・カピトリーノ美術館での展覧会のワンシーン。5世紀初頭から1世紀半ばまでの約1,800点の遺物が展示されており、その多くは初めて展示となった。顔や足などパーツごとに展示されそれぞれに個性を持っているように見受けられる

パレスチナ・エリコで出土した漆喰で覆われた人間の頭蓋骨。新石器時代、紀元前 8,000 年から 6,000 年の間のものとされている。祖先崇拝の初期の形を表しているという点で研究者の意見はおおむね一致しているものの、どのような位の人物なのか、なぜ漆喰などで覆っているのか、など理由はほとんど分かっていない

イギリス・ヴィンドランダ博物館に展示されているローマ帝国時代のものとされている革製の履物。ハドリアヌスの長城で発見された。保存状態も非常によく、形も様々である

ポンペイにある「番犬注意！」(？) のモザイク。この時代から犬は既に紐をつけられて飼われていた事がうかがえる

アレキサンダー大王とダリウス3世のモザイク。紀元前100年のもの。 イタリアのナポリ国立考古学博物館に収蔵されているが2023年末、修復の為107年ぶりに壁面から取り外された。修復は2024年12月までに終える予定で現在は修復の様子をガラス越しに見られるようになっている

1974年、エチオピア北東部で発見された318万年前の化石人骨「ルーシー」。アウストラロピテクス・アファレンシスの中で最初期に発見されたもののひとつであり、全身の約40%にあたる骨がまとまって見つかったという資料上の貴重さから広く知られている。発見者がその日に聴いたイギリスのロックグループであるビートルズの楽曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」に因み、「ルーシー」と命名されたこともまた有名な話である

2021年3月17日、エルサレムの死海の近くの「恐怖の洞窟」にてギリシャ語で書かれた聖書の巻物、いわゆる「死海文書」の数十の断片が発見された。まだまだ謎多き文書である

スペインのカンタブリア州にあるアルタミラ洞窟で発見された、後期旧石器時代の洞窟壁画。考古学は文化人類学など多くの研究にも繋がっている

1974年、臨潼県西揚村の住民が井戸を掘ろうとして土を掘っていた際に兵馬俑の最初の破片が発見された。2カ月後、たまたま現地通信社の記者が県文化館に立ち寄り、陶俑が秦代の俑であることを見抜いた。その記事が中国共産党指導部の目に止まり考古隊が編成され、1年間の発掘で東西200メートル以上南北60メートル以上におよぶ兵馬俑坑1号坑の全容が明らかとなった。発見された俑は6000体に及んだという

土器を発掘するシーン。まずは大胆に掘り進めるも、出土物らしきものに近づいた際には傷をつけないように、細心の注意を払う繊細な作業が求められる

映画「インディ・ジョーンズ」に登場する米国の考古学者ヘンリー・ウォルトン・ジョーンズ・ジュニア博士（Dr. Henry Walton Jones, Junior）は、第1作ではマーシャル大学、第3作ではバーネット大学で考古学の教鞭をとる。実際の撮影はイェール大学

映画「インディ・ジョーンズ」の製作総指揮ジョージ・ルーカスが飼っていた犬と同種のアラスカン・マラミュート(Alaskan Malamute)。 インディ（インディアナ）・ジョーンズの「インディ」とは実は本名ではなく、ジョーンズ博士の飼い犬の名前で、ジョーンズ博士の父親から本名で呼ばれるのを嫌がって名乗っていた。本名は、ヘンリー・ウォルトン・ジョーンズJr.

米国ハートフォード大学の考古学者、リチャード・フロイント博士。ナチスが数千人のユダヤ人を殺害したパネライにある第二次世界大戦の遺跡の調査に携わってきた。考古学チームはナチスがガス室を使用し始める前にユダヤ人が組織的に殺害された証拠を記録してきた

サー・チャールズ・レオナード・ウーリー。イギリスの考古学者。メソポタミアのウルの発掘はウーリーのよく知られた業績である。彼は"現代"考古学者の1人とされ、考古学への貢献により1935年、ナイトの称号をうけた

ウィラード・フランク・リビーはアメリカの化学者。考古学研究でも用いられるで炭素14を用いた放射性炭素年代測定法を開発した功績で知られ、1960年のノーベル化学賞受賞者となった

マーティン・カーヴァーは英国ヨーク大学の考古学名誉教授であり、発掘と調査における新しい方法の第一人者である。彼は中世初期のヨーロッパの考古学を専門としている

ハインリヒ・シュリーマン。ドイツの実業家であり考古学者でもある。その財力を活かしギリシア神話に登場する伝説の都市トロイアを発掘した。世界旅行で清に続き、幕末・慶応元年（1865年）には日本を訪れ、当時の東アジアを描写している。その時の状況を「八王子紀行」などで記した

英国の考古学者、エジプト学者であるサー・ウィリアム・マシュー・フリンダース・ペトリー。ギザの大ピラミッド、次にエジプトの多くの重要な遺跡の発掘し現地発掘の技術と方法をもとに、古代文化の歴史の再構築を可能にする順序年代測定法を発明した。またエジプトに英国考古学学校を設立したり、紀元前 1213 年から 1204 年まで古代エジプトの王であったメルネプタハの石碑にイスラエルに関する知られている最古のエジプトの記述があることを発見した人物である

イギリスの考古学者、オーガスタス・ヘンリー・ピット＝リバーズ中将。彼は考古学者になるために軍隊を辞め、単に珍しい物を収集するのではなく、考古学を正確な科学に変えることに多く貢献した。物体の形状はそれを作った社会の進化に応じて進化し、現場における物体の位置が重要であることを発見した。また1882年には英国初の古代記念物検査官に就任した

エドワード・シルヴェスター・モース。アメリカの動物学者。 標本採集に来日し、東京帝国大学のお雇い教授を2年務め日本の大学の社会的・国際的姿勢の確立に尽力、また東京都にある大森貝塚を発掘し日本の人類学・考古学の基礎をつくった。日本に初めてダーウィンの進化論を体系的に紹介した人物でもある

ザヒ・ハワス。エジプトの考古学者。エジプト考古最高評議会（CSA）事務総長であり、2011年に一時期エジプトの考古大臣も務めた。欧米や日本のマスメディアの利用に積極的で、「エジプトのインディ・ジョーンズ」とも呼ばれるいる。出土国主義を強く取っており、合法・非合法を問わず流出した文化財に対し返還要求運動の活動を繰り返している

ハワード・カーター。イギリス生まれのエジプト考古学者。1891年の17歳の時に遺跡発掘現場の助手としてエジプトに渡る。イギリスでは高等教育こそ受けなかったものの、精緻な模写や考古学への強い情熱が高い評価を受け、1899年から1903年までの4年間、エジプトの考古局首席監督官（遺跡監督官）を務めた。その後、イギリス貴族を中心に遺跡発掘の資金援助を受け、1916年からエジプトの王家の谷発掘調査に着手。そして援助の契約の切れる1922年、ついに「世紀の発見」と言われるツタンカーメン王の墓を発見した

イガエル・ヤディンは、イスラエルの軍人、政治家、考古学者である。第2代イスラエル国防軍参謀総長、ベギン内閣の副首相など要職を務めたほか、退役後は考古学者となる。父親のエリエゼル・スケーニクもまた考古学者であった。1956年、死海文書について書いた1955年の博士論文でイスラエル賞を受賞。クムラン、マサダ、ハツォール、ゲゼル、メギドなどの主要遺跡の発掘調査を指揮した

シャルル・ピエール・ガストン・ナポレオン・デシャン。フランスの考古学者、作家、ジャーナリスト。アモルゴス島、キオス島、アナトリアで考古学的発掘を行った

トーマス・エドワード・ロレンス。イギリスの軍人、考古学者。オスマン帝国に対するアラブ人の反乱（アラブ反乱）を支援した人物で、映画「アラビアのロレンス」の主人公のモデルとして知られる。1909年の夏にはレバノンを訪れ、1,600キロもの距離を徒歩で移動しながら十字軍の遺跡調査をしている。大学卒業時にはこれらの調査結果を踏まえた論文を著し、最優秀の評価を得た。卒業後は恩師のデイヴィッド・ホガース博士による大英博物館の調査隊に参加し、カルケミシュで考古学の仕事に従事した

ジェーン・デュラフォイ。フランスの考古学者、探検家、小説家、フェミニスト、ジャーナリスト。当時女性には着用が禁止されていたズボンを履き、短髪にし、兵士として戦争に参加したこともある。彼女は夫とともに古代ペルシャの都市スーサを発掘し、さまざまな遺物を発見、そのうちのいくつかはルーブル美術館に展示されている